牛乳が体に良くないは科学的根拠がない-。新谷弘実医師の回答書に対し、18日、「牛乳乳製品健康科学会議」(折茂肇会長)が出した見解は真っ向から反 論。牛乳神話の危険性に思い至ったとする新谷医師の主張に対し、同会議は「誤った統計の用い方がある」と指摘。「科学的根拠が示されていないだけでなく、 全く該当項目の記載がないものもあった」とした。
新谷医師は公開質問状の回答書で「腸の悪い患者に共通しているのが乳製品をはじめとする動物性タンパク質の多量摂取という事実を医学的見地から考察。牛乳を万人が飲むべき完全食品であるかのように訴える牛乳神話の危険性に思い至った」と主張している。
しかし、牛乳乳製品健康科学会議は、新谷医師が回答書で文献を提示しながら論述している根拠について、「科学的根拠が示されていない。誤った統計の用い方もあった」としている。
新谷医師は、「牛乳を飲み過ぎると骨粗しょう症になる」という主張の根拠として、「米国や欧州諸国のように大量に牛乳からカルシウムを採ることを勧めて いる国の方が、牛乳からのカルシウム摂取の少ない国より骨粗しょう症と骨折の発生率が高率である」という2003年の世界保健機関(WHO)の勧告をあげ ている。
これに対し、同会議は、「WHO勧告は原因解明の必要性を指摘したが、牛乳多飲が原因とは一言も述べていない。一方でWHOと国連食糧農業機関(FAO)は、『カルシウムの最良の供給源は牛乳、乳製品である』と明確に記載している」との見解を示した。
「最大の牛乳消費国で骨折が多い」との新谷医師の主張に対しては、同会議は「骨折のしやすさなどには人種的な遺伝要素もある。カルシウムだけが原因でなく、タンパク質やビタミンDの摂取量も関係してくる」と説明した。
「牛乳中のナトリウムの摂取でカルシウムが排泄(はいせつ)されてしまう」と新谷医師が指摘した根拠になる複数の論文について、同会議では「ナトリウム の摂取がカルシウムの吸収に良くないことが指摘されているが、牛乳中のナトリウム量はカルシウム排泄に問題がある量ではない」とした。
さらに、新谷医師が「牛乳を飲む人の骨折率が1・45倍」の根拠としたハーバード大学の研究論文は、「その研究者自身が『統計学的に牛乳を飲む人と飲まない人の骨折率に差がない』と結論づけている」という。
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■都合良い部分引用
「牛乳乳製品健康科学会議」の折茂肇会長の話 新谷医師の回答書を受領後、回答書で言及・列挙されている論文やデータのすべてについて、改めて検証し た。その結果、「病気にならない生き方」の牛乳乳製品に関する主張については科学的根拠がまったくないという結論に達した。
新谷医師の主張は、内外の研究論文・臨床データの中から「牛乳は体に良くない」という結論を導くために都合の良い部分だけ、極端な場合はワンフレーズだ けを引用することで成り立っている。私どもは牛乳が人間にとっての完全食品とは考えていない。ビタミンCや鉄分はわずかしか含まれていない。食べ物はバラ ンスよく摂取することが重要だ。
http://www.business-i.jp/print/article/200712190035a.nwc